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『ジョーカー』は犯罪者予備軍の留飲を下げる映画。ネタバレ注意。

2019年10月25日

 

映画『ジョーカー』が賛否両論を巻き起こしています。

映画としての完成度を絶賛する人もいれば、犯罪者を増やす危険があるとして上映中止を求める声もあります。

論評する人も多くて、映画評論家や評論家きどりのライターやブロガーたちが言いたい放題書きまくり。

はてなブックマークの通称ブコメやYahoo!映画のユーザーレビュー数も非常に多いです。

誰もが一言モノ申したくなる映画なんですね。

アメリカでも日本でも評論合戦。

これだけ社会が反応した映画は久しぶりな感じです。

 

映画の評価点はYahoo!映画では4.09点と超高得点。(2019年10月25日時点)

評価数が5000件以上あるのにこの点数はすごいです。

 

私も観てきました。

 

私は映画の内容をほぼ知らない状態で観たのですが、犯罪者を増加させる可能性があるという評論は聞いていたので「世の中に絶望した男がジョーカーになるまでを描いているのかな?」と何となく想像していました。

そして予想通りの展開。

映画の前半では、貧乏で病気を抱えながらも、愛する母親、夢見る仕事などに希望がある男アーサーが描かれます。

この時点で「あー、きっとこの希望がひとつずつ失われていって、希望が全部失われたところでジョーカーになるんだな」と想像できちゃうんですよね。

結果、その通りに。

  • 母親は幼少期の自分を虐待し、脳の損傷の後遺症が残った事実を知る。病気だと聞かされていたが病気ではなく虐待の後遺症だった。
  • 父親だと思っていた政治家は父ではなかった。母親も産みの母ではなく、自分は両親が誰か分からない孤児だった。
  • 成功を夢見た仕事は同僚の罠に落ちクビになった。
  • 憧れていたスターに後遺症と芸をバカにされた。
  • 社会福祉で通っていたカウンセリングは財政削減で打ち切られ、飲んでいた精神薬が手に入らなくなった。
  • 恋人との暖かい時間は薬が切れたことによる幻覚だった。

生きる希望を絶たれていく中で、アーサーは3人の投資銀行員を殺害します。

ひょんなことから銀行員たちにアーサーがボコられた際に、所持していた拳銃で撃ち殺してしまいます。

無敵の人が完成した瞬間でした。

 

落ちるところまで落ち切ったアーサーは、自分を馬鹿にした人間を殺していきます。同僚を殺し、テレビスターを殺し。

最後は警察に捕まって、精神病院に送られてThe End。

 

希望のない映画ですね。

典型的なバッドエンド。

 

 

評論を読んでいると、アーサーの気持ちに共感する人もいますし、逆にアーサーの行動を非難する人もいます。

私はどっちかと言えば、共感する方。

 

人間は完全に希望を失った時に2つの選択肢のどちらかを選ぶんですよね。

自殺するか、自分以外を殺すか。

どちらも目的は同じで「希望のない世界から自分が逃げるため」の行動です。

 

アーサーは当初自殺しようと計画していましたが、テレビ番組の出演中に馬鹿にされた怒りから、世界を殺す方を選択しました。

 

 

こういう物語なので、「人生に絶望している人が映画に感化されて、犯罪を起こすのではないか?」と心配する声があるんですね。

でも私はその心配はないと思っています。

逆に犯罪を抑制する気がするんですよね。

というのも、まったく希望のない人はそもそも映画を観ません。映画はお金を払って映画館で観ないと見れませんからね。人生に絶望している人はそこまでの行動力を持っていません。どうせ映画なんて観たところで…と思うだけです。

テレビでたまたま目にすることはあるかもしれないけど、たぶんジョーカーは地上波では放送しないでしょう。R15指定だし。
ネットでも月額有料のサービスでやる程度でしょうね。

仮に人生に絶望している人が観たとしても、映画の中でアーサーがめちゃくちゃにやってくれます。それは自分の代わりに世の中に復讐を果たす姿なんですね。鬱屈した気持ちを一時的に緩めてくれるでしょう。レイプ魔でもオナニーをすれば性欲が収まるようなものです。

また、アーサーに強く共感することで「辛いのは自分だけじゃない。一人じゃない。」と思えます。孤独感を忘れられます。

アーサーの置かれた境遇より不幸な人はほとんどいません。
「自分は世界で一番不幸なんだと思っていたら、もっと不幸な奴がいた。自分にはアーサーよりも希望があるんだ。」と気づくこともできます。

 

以上のような理由から、犯罪を抑制する効果がある映画だと思います。

 

 

というわけで、私の結論。

映画『ジョーカー』は人に希望を与える映画です。

あなたが観たら胸糞悪くなるかもしれませんが、それはあなたが幸せだから。

自分がいかに恵まれているかを実感したい時に観るのがおすすめです。

ただ予想通りの展開になるので悲劇としては平凡なものです。絵の撮り方も普通で、意外性や忘れられないシーンなどはありません。
この映画のワンシーンをパクって表現しようと思うクリエイターもいないでしょう。

映画を何百本も観ている人なら「使い古された表現だな」と感じると思いますよ。

 

 

そういえば、北野武監督は以前こう仰っていました。

「俺の映画を観たら悪影響があるなんて言う評論家がいる。じゃあなんでこれだけお涙頂戴の物語に溢れているのに犯罪が減らないんだよ。」

 

 

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